自律性を引き出す指示

じぶんぢから再生プロジェクト ゲンキポリタン
株式会社マートワン

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【50】自律性を引き出す指示
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自律した行動ができる。
自分自身が、自分の部下が、自分の家族が・・・自律は自立の基礎であり、幸福に欠かせないスキルです。

自律性を引き出す条件としてあげられるものになにがあるのか

�日本の学校のように知識を詰め込み型でなく「あなたなら、どう取り組むか」「みんなはどう取り組むか」という点を重視し各自の「自立性」を尊重、自分で考え判断決定するスキルを大切にしていること
�お互いに教える人であると同時に教えられる立場である「補完関係」を認識していて、お互いを高めることを奨励し大切にしていること
�どんなことでも聞くアティテュードを持ち「信頼関係」を強める仕組みが組織にあること

「あなたなら、どう取り組むか」「みんなはどう取り組むか」あるいはお互いに教える人であり教えられる立場になるには基礎知識が必要です。
そこで基礎知識を得て、自律に至る方法にどんなものがあるのか考えてみましょう。

自律に至るプロセスには、次の3つがあります。
1) 自律的なひとをモデルにして学び、模擬を通して自律に至る
2) 上司やコーチ的な立場のひとの他律の干渉に反抗、否定によって自律に至る
3) 他律の教育、干渉によって獲得した知識の断片が蓄積されて、気づきが起こり自律的な判断に至る

どのプロセスにも、次のような懸念される問題が残ります。
1)は一見スムーズに見えるが実は自律できるようになったわけでなく、単に作法として修得したに過ぎない場合が懸念されます。
2)は、一般に子どもが親から離れて自分を確立するプロセスと同じです。否定から逆の行動をとるのであれば、この場合も1)と同じく単なる模擬に過ぎず、自由に自分で判断、決定しているわけでなく、自律は存在しないことが懸念されます。
どの場合も環境が、与える影響が非常に大きいのは言うまでもありません。
もっとも完全に自由に自分で判断、決定しているように思える3)の場合にも、実際には完全に自由に自分で判断、決定しているわけでなく、判断、決定をする際に、まだ自分のものになっていない部分の知識が外部に残っていて、それも併せて活用するからです。

指示は指図と違います。
正しい指示とは正しいコミュケーションであって、正しい指示には、なにをすべきか、なぜそうするのかが含まれます。
これらがなく、どうすべきかだけ、あるいはそれもない環境の知識を使っても、自律はできません。模擬の場合は、さらにひどいものになります。


部下を持つ者、あるいは自立した部下を育てる者には、部下に正しい行動させる必要があります。
自分が自分に指示を出す自分の場合も同じで、自分に正しい行動させる必要があります。
それには正しい指示命令が必要になり、正しい指示命令をするには、思いつきではなく準備が必要です。
正しい行動とはなにか、それは、こうすべきではなく、なにをすべきか、なぜそうするのか、理念(ゴール)を自分の良心と良識を使って実現することです。

指示命令を出す者の心と意識が、理念に見合うものであること。
この点がとても重要なのです。
そして基礎を身につけさせるために、出す指示命令は、自分に服従することを目的とするのではなく、やがては自律さらに自立に向かうための他律であって、気づきによって
自律に至ることを目的としていないといけません。

正しい指示をするには、まず誰に、どんな仕事(作業)を、どんな順序で、いつ指示命令を出すかを予め決める必要があります。
その際、モチベーションをどのようにして高めるのかも考慮しておきます。

決めていても、状況は刻々と変化するのが普通ですので、指示するときに計画そのものに変更が起こることもあります。予定していた指示命令にも変更が生じます。
すると当然ですがモチベーションの高め方にも変更が生じるのはいうまでもありません。
それがマネジャーの普通であり、もしそれを面倒だと思うなら部下を持つ資格はありません。自分を律するには、やはり同じことが必要です。
つまり自分を律することが出来ない者はマネジャーになってはいけないことを意味します。

面倒がらずに言葉にするしないにかかわらず部下の目には不信に映りますし、それに無関心な部下ならモチベーションの低い人であるといえますので、マネジャー自身の不満のもとにもなり、負の連鎖と循環が繰り返し起こるようになります。
人を使って目標を達成するのが仕事であるマネジャーにとって、指示命令こそ仕事の本分です。
人を使うということは個人個人の能力をフルに発揮させる環境をつくることであり、仕事がしやすいようにするということで、仕事が楽しいにつながっていきます。
生産性が高いのと仕事は楽しいのが同義語であるのが両者にとって良い環境であり、正常です。
生産性は高いが仕事は楽しくないというのは、仕組みが歪んでいることを意味しています。また生産性が低く仕事は楽しくないというのはマネジメントが完全に機能していないことを意味しています。
なかでも、指示命令のまずさから目標が達成できない、人が育たないのはマネジャーとしては失格です。

正しいコミュニケーションとは、自他肯定スキルが高まることをゴールにしていることが条件です。
つまり両者がWIN—WINであること、達成感によって自尊感情をどんどん高めていくことにあります。指示の仕方で結果が変わることを認識して間違いのない指示をするようにします。

正しいコミュニケーションとして、指示命令を出すときは、次の12の条件が満たされているかどうかに留意します。
この条件は、上司が部下に指示する場合はもちろんですが、コミュニケーション・スキルとして自分が自分にする指示する場合にも有効です。


1. 人を介さずに相手に直接に伝える。
それによって誰が誰になにを求めているのか、責任と義務の所在がはっきりします。はっきりすることで問題が生じた場合に自らの反省と気づきが可能になります。
セルフマネジメントで、自分が自分に指示する場合には、自分が選択した意識をしっかり持つようにします。

2. 個人個人、ひとりごとに伝える
ひとりひとり聴く能力もちがいます。さらに遂行能力が個人ごとに違うので、「こうあるべき」という決めつけをしないので、与える作業の分量や分担は個人ひとりごとに異なります。個人がやってみたいと思えるようにします。
セルフマネジメントで、自分が自分に指示する場合には、集中できるように質と量に注意しましょう。ハードルが低いと意欲が薄れます。
また言葉の解釈は個人によって違います。
「それはそういう意味でしたか。分っていたら・・・」という場面はよくあります。無用なトラブルを避けるために「用語」の意味を定めて使用するようにし、都度確認を通して浸透を進めます。

3. 目的を明示する
「指図ばかりする」という不満がありますが、「指示ばかりする」という不満はないように目的を明示しないと指示でなく、指図になり、モチベーションを低下させます。
「なにをするのか」「なぜそうするのか」の説明は目標を共有するうえでとても大切です。共通した意識は日々仕事を通じて高めていきます。
仕事にかかる前に共有した意識をしっかりと身につけないまま、「どうするのか」を教えてもテクニックとしてマスターするので、結局は求める結果を出せなくなり、自己肯定感が高まらず、気づきの機会が生まれなくなります。
セルフマネジメントでも、自分が自分にする場合も同じです。

4. 一般従業員には一度の指示で複数の作業を求めない。
その最大の理由は「優先順位」の大切さと集中力を引き出すことです。
行動を変えたいと意識があっても、「優先順位」が変わらないと、行動が変わることはありません。生きるとは時間そのものであり、時間の使い方が生き方そのものです。
マネジャーや熟練者には、能力を判断した上で原則的に複数の作業を指示しても大丈夫ですが、その場合でも優先順位を明示します。
熟練していないひとからは、不必要なストレスを取り除き集中できる環境を用意する意味でも、一点に集中してスキルアップができるようにして自己肯定感を高めることを可能にします。
面倒がる人が多いのですが、結局は目標達成ができない原因になっている場合が多く自他否定という最悪の構えを強化してしまいます。
セルフマネジメントの場合も同じです。優先順位を変えない限り結果は変わりません。

5. 指示した内容を復唱させることによって指示内容の再確認をします。
   通じたつもりでも通じていないものです。
   赤といってもひとによって赤のイメージは違うように、
   解釈の違いは生じるのが普通です。
   内容を確認することは失敗を未然に防ぐために欠かせません。
   セルフマネジメントでも同じで、メモなど再確認します。

6. 一回の指示命令単位で、報告を受ける(あるいは自ら確認する)ようにします。
  報告がないと完了したことが分らないので、 次の指示命令が出せなくなります。
  すると、その間、部下は何もすることがない指示待ち状態になってしまいます。
それが頻繁に起こると自分の存在感が希薄になるだけでなく、指示待ちがくせになります。積極的に参画できるようにするためにも、一回の指示命令ごとに報告することを習慣化しポジティブな意識を強化します。
また上司がプロセスに注目していることを意識させることで、孤独感を和らげ意欲づけします。 
セルフマネジメントでも同じで、現状認識をして次へつなぎます。
  
7. 具体的な手順を明示します。特にO.J.Tの場合は伝え方で結果が変わります。
「どうするのか」手順を説明するときに、特に注意したいのは「なにをするのか」「なぜそうするのか」の説明です。これが不足するとテクニックだけをマスターして、意図した通りの結果を実現できないばかりか、自分で考えることができなくなるだけでなく、応用力が育たず、毎回なにかにつけて具体的に教えないとできなくなります。結局両者ともに否定感が強まり、自尊感情を弱めます。

8. 結果は数字で表現します。
定性的な数字に置き換えできない場合は別にして、可能な限り数字で報告できるように指示します。併せて時間は必ず含むようにします。


9. 期限を定めて、具体的に日時を表現する。
期限を伝える場合、誰が聞いても同じ解釈をするようにします。
たとえば「夕方まで」という表現は、具体的に何時のことか、人によって解釈が違います。「今週中」も同じですが、「今週の金曜日。夕方5時まで」なら誰もが同じ解釈をします。
生きること、仕事することは、すべて時間と密接に絡んだことです。
期限のない仕事は、それだけで中途半端を意味していて、指示段階で遂行を困難にしています。期限を切ることを重圧と感じるなら指示する側がネガティブな側面に気づき反省する必要があります。
セルフマネジメントでも同じで、特にゆるくなりがち。厳守する訓練は自分力を大幅アップします。

10. 途中で確認する。
    途中確認で、問題を発見したら、O.J.T の機会が発生したということです。
期限が来てしまってから確認したのでは手遅れです。
指示命令と進行状況を見極め、時間のロスを最大限防止し、達成できるように修正します。失敗を経験させて叱咤激励するより、成功を経験させてモチベーションをあげるほうが遥かに容易です。
そしてなにより重要なことは、上司がプロセスに注目していることを意識させることで、孤独感を和らげ意欲づけします。 
このサポートで、失敗しないようにするにはどうすればいいのか気づくことができること、さらに思いやりの重要性に気づき、他者へのサポート意欲が高まります。
これがチームワークを円滑にする原動力に発展していきます。

11. 結果の出る前に追加教育することが、もっとも効果的な教育です。
教育はどんどん追加するべきもので、指示は状況に応じて適正な変更をするべきものです。
逆に、指示を追加して、教育は変更すると部下は混乱して、義務が果たせなくなります。
しかも指示待ちになり、自分で考える習慣を失います。
マネジャーは部下が仕事をしやすい環境をどのようにして作るかが問われています。余計なことに意識させず、必要なことに集中できるようにすることが重要なのです。
義務が果たせない時は何が悪くてそうなったのか、どうするべきだったのか、反省させ気づかせるようにします。
セルフマネジメントでも同じで結果を出すことを徹底する。          

12. 不完全な仕事の仕方は一時停止する
不完全な仕事の仕方や結果が起こっている場合は、その状態を認めず一旦中止・中断して、続けさせないようにして、次の作業に繋がないようにします。
そのまま間違った作業を繋いで続けていくと、その担当者は不完全を認識しないままになり、反省もできません。
結局、その間違ったやり方はくり返し行われ、やがて組織全体に蔓延します。
品質の悪い作業はさらに劣化を招き、組織の劣化につながります。
セルフマネジメントでも同じで、「まあいいわ」を認めず修正するようにします。



自律へのプロセスが閉ざされた職場はあるものです。
それは仕事の仕方が間違っているのですが、その間違いは理念がない、浸透していない職場に発見できます。
理念のない職場とは、考える機会が少なくてすむ職場です。
それが楽なのか苦痛なのか、それぞれの人の判断ですが、その結果、類は類を集めることになります。

楽しい職場、働きやすい職場にはひととひとの間に境界があります。
そしてこの境界への解釈は、驚くほど事実と逆転しています。
つまり、境界がないのが親しい、好ましい間柄と解釈するひとが多いことです。
遠慮があることは好ましくありませんが、それと境界を越えることは次元が違います。
境界は人権と絡んでいますが、遠慮と人権は全く異質なことで、人権にルーズなことが境界を越えることを意味していますが、この解釈が混乱してしまっているひとが多いということです。親しき仲にも礼儀ありといいますが、それは作法上の問題に留まらず、人権問題に及んでいますが、その解釈にも支障をきたしているひとが多いのが事実です。
確かに歪んだ人間関係においては、境界がないのが親しい、好ましいとする場合がありますが、健全な関係を求めるものはこれを嫌います。
なぜなら甘えと依存が潜んでいるからです。自律を求めないひと、自立に自信がないひとにとって甘えと依存は心地よいものですが、大変なリスクを含んでいます。
事実、人間関係のトラブルや混乱は境界を越えること、つまり甘えと依存によって発生しています。
しかも親しいほど、境界を越えたために問題化しています。

まったくおかしなことなのですが、実はこの点においても、他の問題同様、自分で自分を阻害していると言えるのです。

指示は、ひととひとの間には境界があることを前提にしたものでないといけません。
また、境界を心地よいものにして、自律への気づき、自立へのエネルギーにしていくのが指示なのです。

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ブログ 愛ピDIRECT「ライフスキルで自分を動かす」は、ひとが健全に生きて行くために世界保健機構が定めた「ライフスキル」を仕事を通して身につける方法についてレポートしています。
ライフスキルは、生きる力であり、技術です。
人は基本的な生きる構えの影響を受けていて、ひとによって不足、アンバランスがあるものです。ブログ 愛ピDIRECT「ライフスキルで自分を動かす」は、「ライフスキル」の不足を補いバランスを調整するために仕事、学業、人生の大事な場面などの機会を通して身につけることをめざしています