モチベーションは本当の自分にアクセスするスキル

じぶんぢから再生プロジェクト ゲンキポリタン
株式会社マートワン
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【5】モチベーションは本当の自分にアクセスするスキル
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「モチベーション(motivation)」が,意欲を「本来の自分」にアクセスして心の内面から高めるのに対し、「インセンティブ」は,報酬などを期待させることによって意欲を「役割性格の自分」にアクセスして外側から高める働きをします。

先の説明したように、インセンティブは「報奨金」「奨励金」などの名目で使われるのが一般的で「意欲刺激」と呼ばれています。
下の図のように、インセンティブが役割の自分に働きかけるのに対して、モチベーションは本当の自分に働きかけます。
その違いからインセンティブよりも、モチベーションの方が深く長期に、意欲を引き出すことが可能になります。

本当の自分とは、人間の身体でいうなら神経のような役割をしています。
その周囲にある「役割の自分」とは仕事などの役割によって、後から作られていく役割性格をもった自分で、身体に置き換えると骨といえます。
神経がやられたら身体がダメになってしまうように、本当の自分が機能しないと自己実現はできなくなります。

モチベーションを引き出すことは本当の自分を檜舞台に出してやるのと同じです。
モチベーションのことを、やる気を出させて、人を巧みに使う意味にとっている方もいるかも知れませんが、そうではなく「自己実現」で得られる喜びに向かう力です。

ところで、本当の自分とは、どういう自分でしょうか?
私たちは、よく「本当の自分」と表現しますが、なんとなくイメージできても、かなり曖昧です。
世界保健機構が提唱するライフスキルは健全な生活を実践する上で必要な技術のことですが、これらのスキルが「本当の自分」と見ることができます。

先にも説明しましたが、ライフスキルは、以下のスキルです。

・自己認識 ・共感性 ・効果的コミュニケーション・スキル ・対人関係スキル ・意志決定スキル ・問題解決スキル ・創造的思考 ・批判的思考
・感情対処スキル ・ストレス対処スキル 

以上10のスキルは誕生から成長の過程で身につけていくものです。
10のスキルは相互に影響しあっています。
相互に影響しあっているために、あるスキルが未熟なことから思うように使えないことから、持っているスキルを使いきっていないと感じたときに、本当の自分が出ていない、表現されていないと感じます。
また、これらのスキルは感情の影響を受けます。

モチベーションを引き出す作業とは、自分の内にある10のスキルへの呼びかけといえます。
呼びかけた時、必要にして充足されているスキルは元気よく手をあげます。
一方、不足する、不足していると感じている、あるいは思い込んでいるスキルがあると、逃げ腰になります。
自分の内で葛藤が生じます。
ひとを成長させるには、長所を観てあげるのが鉄則です。
しかし、会社経営でも個人でも同じですが、弱い部分が全体のレベルを引き下げているのも現実です。
ここでも葛藤が生じます。

モチベーションを高めるとは、葛藤へのチャレンジといえます。
誰だって完璧ではありません。
みんな複雑に交叉した長所短所をもっています。
その「普通」にむかっていくために、自分を勇気づけること、励ますことがモチベーションアップといえます。
裏を返せば、未熟なライフスキルも含めて肯定する作業と言えます。

私たちは、過去の体験から、人それぞれに自分の「不足」を感じているものです。その不足をどう考えるかです。

たとえば、こんな話を聴く機会がよくあると思います。

 コップの中に半分水が入っている。
 それを見て、もう半分しかないと思う人。
 まだ半分あるもあると思う人。
 同じものを見ても考え方はこうも違う。

 ポジティブ発想、ネガティブ発想の事例に、よく使われる話です。

これがひとの長所を観てあげるに通じることです。
しかし現実は全体のレベルは最も弱い部分に引き下げられるとも言いました。
矛盾に思えますが、その矛盾に真実が見えます。

つまり、“行動している“がもっとも重要なのです。
具体的に言うと、自分の長所に目を向けて、
「自分にはこんないい点もあるのだから、目標をもって取り組めばきっとできるようになる。だから目標を定めて少しでも「自分の全体力」をあげようといま奮闘中です。」と言える状態です。

これが不足に対する考え方です。

ところが自己肯定感(自尊感情)は弱いと不足が強調されてしまい、充足を軽視してしまうのです。
つまり自己否定感が強まってしまいます。
自己否定感が強いと、モチベーションがあがる機会は少なくなります。
上司から、ストレッチターゲット(背伸びしないと届かない目標)を与えられると、気が滅入ったり、落ち込んだりします。
自分を伸ばすという意味では、「ありがとうございます!」と返したくなる機会です。
ところが落ち込んでいると、「上司もやり過ぎかな」と思って「ベビー・ステップ」な転ぶことのない目標に変更する場合もあります。
つまり、自分の価値を値引きされるのです。
値引きと思うか、適切と思うかはそれぞれのひとのセンスですが、背伸びしないと伸びないのは事実です。
自分の価値の値引きは自分による自己否定です。

モチベーションをあげる作業は、そこに手を突っ込んでかき回す作業です。
作業ですから時間を使います。
一方、モチベーションをあげる作業に使う時間を、娯楽や遊興に気分転換する時間として消費することも容易です。
時間は再利用できないので消費するとなくなります。
食えたらいいのだと思う方も少なくありませんが、反対にもったいないと考えるひともいます。
なぜかというと、本当の自分を生きていないと思うからです。
本当の自分を粗末にすると役割の自分も機能しません。

ひとは共同体の一部ですから、自分が自分を生きないと共同体までおかしくなります。
自分ひとりくらいいいだろうと思っても、そういうあなたは、いてもいなくてもどちらでもいい人ではない。だからあなたが影響する。
共同体をいいものにしたいから、あなたに幸福になってもらわないと困る。
だから幸福ってどういうことか正しく理解して、きちんと幸福になってもらいたい。

そういう話なのです。
共同体とは、カップル、家族、会社、サークル、町内、国などです。
私たちは所属したい欲求、愛されたい欲求、承認されたい欲求があります。
その土台となるのが共同体です。
共同体は自分のアイデンティティに強い影響を与えています。
さらに共同体の役に立つことで、より確かな自信を持てるようになります。

モチベーションを引き出すとは、むずかる不良な自分と、「本当の自分を生きたい」とアピールする自分との駆け引きといえます。
自分のやる気を引き出すときに、自分の欠点を気にすることはありません。
ひとは誰だって自分は大切な存在だと思いたい、思われたいからです。
その最大の敵は欠点が問題だと思い込んでいる自分だからです。

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