ライフスキル

自己肯定感を確かなものにする方法として「ライフスキル」が有効です。

ライフスキルとは、 世界保健機構(WHO:World Health Organization)が、個人が日常生活の欲求や難しい問題に対して、より建設的、前向きにかつ効果的に対処するために必要不可欠な能力と定義づけた技術です。
ライフスキル教育は、先進国などで社会問題化している青少年の薬物乱用、飲酒喫煙、無防備な性行為、学校中退、退学などの危機的状況を未然に防ぐ方法として、発達段階に応じたライフスキルを身につけさせるべきだと1993年にライフスキル教育プログラムを公表、紹介したのが始まりです。

世界保健機構(WHO)は、健康を人間の基本的人権の一つと捉え、その達成を目的として1948年に設立された国際連合の専門機関(国連機関)で現在の加盟国は192ヶ国。
本部はスイス・ジュネーヴ。設立日である4月7日は世界保健デーになっています。
WHOにおける健康の定義は、「完全な肉体的、精神的及び社会福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」(WHO憲章前文より)と広い目標を掲げ、
病気の撲滅の研究、適正な医療・医薬品の普及だけでなく、ベーシック・ヒューマン・ニーズの達成や健康的なライフスタイルの推進に力を入れています。

ライフスキルは、性格を変えようとするものではなく、よりよく生きるために「なにを、どうするのか」という選択の場面で役に立つ技術で、自己実現に欠かせません。

ライフスキルは、日本語ではいろんな表現がされているようにです。
「生きる力」「心の力」などひとによって表現が違うようですが、「命の力」であり「生き方の技術」ともいえます。
車を運転するのには練習をして免許書を獲得しています。ひとが生きるとは、車の運転以上に難易度の高いことです。
そのために生まれてからずっと暮らしの一方で、能力アップを図っているのですが、消費活動に関心が行き過ぎて、案外その意識が少ないようです。



ライフスキルは、みんなどこで身につけているのでしょうか?

 学校や家庭などで学んでいますが、そのほとんどは無意識の内に学んでいます。
ですからライフスキル修得・活用の個人差は、性格や頭のよさとして片付けられてしまうので、実際の暮らしの場面において、「私なんか」というような自信喪失につながっています。
 実際はそうではなく、ライフスキルの身につけ方を間違えているだけなのです。
間違ったドライビング・テクニックで、運転しているようなものにすぎないことです。そう思えば悩んだりすることではなく、精進することだと理解していただけると思います。
ライフスキルは、身につけるように意識して取り組めば、どんどん上手になるものです。


▼ ライフスキルを構成しているスキルには以下の10項目があります。

・ 自己認識 Self-awarenessr
・ 共感性 Empathy
・ 効果的コミュニケーションスキル Effective Comunication Skills
・ 対人関係スキル Interpersonal relationship Skills
・ 意志決定スキル Decision Making Skills
・ 問題解決スキル Problem Solving Skills
・ 創造的思考 Creative Thinking
・ 批判的思考(クリティカル思考) Criticai Thinking
・ 感情対処スキル Copingwith Emotions
・ ストレス対処スキル Copingwith Stress



これら10のライフスキルは、かつては、生活の知恵やコツとして、親から子へしつけというかたちを通して、地域社会や子供社会で、また年長から年少者へ世代の違った集団による遊びの中で、無意識的・体験的に伝えられて獲得したものです。
しかし、少子化、地域社会の変質、情報化が進むなかで、世代間の乖離が進み、人間関係が希薄になり、スキルを学ぶ機会が極度に減少する傾向にあります。
また、スキルを身につけるのにふさわしい環境も機会も失われています。人が幸福、安全、快適に暮らすために、いまもっとも必要とされているものは携帯電話でも、液晶テレビでもない、 ライフスキルこそ、いまもっとも必要とされていることではないでしょうか。


10のスキルは相互に関連しているので、判りやすく活用しやすくするために、次の5つにまとめることができます。


1.自己認識スキル(セルフエスティームスキル)
セルフエスティームとは、自尊感情、健全な自尊心などの意味です。
自分のよいところを発見し、好きになり、自分を大切にできる自己肯定能力で、そのスキルにより他者(まわりの人)を肯定するのも可能にしますので、対人関係スキルによい影響を与えます。


2.意志決定スキル
私たちは毎日頻繁に選択作業の繰り返しを行っています。
まさしく人生は次から次へと選択の繰り返しなのです。
意志決定スキルは、いくつかの選択肢の中から、最も望ましいと考えられるものをひとつ選択できる能力です。


3.コミュニケーションスキル
人間関係を損なうことなく積極的かつ上手に自己主張(アサーティブ)できる能力です。
コミュニケーションは、自分を抑圧しながら相手を立てることでも、なんらかの力で相手を抑圧するものでもありません。
互いの人格を認めるとは、互いの価値観や意見を認めることに他なりません。
しかしそれでは意見の合意を実現するのは困難です。
互いに意見を主張しながら、よりよい方向へベクトルを合わせながら、最適を発見していく能力です。
自分が相手より上でも下でもなく対等感と自他ともに尊重のなかに、豊かな感情と冷静さでもって感情的にならず意見交換できることが基本です。


4.目標設定スキル
自分や共同体が実現したいことを達成するために実行可能な計画を立てることができる能力で、モチベーションとも強く関連したスキルです。


5.ストレス・マネジメントスキル
ストレスは一般にストレスは悪いものと認識されていますが、いいストレスと悪いストレスがあります。
いいストレスには積極的に我慢してコントロールしていくことが自分育ての力になります。
有害なストレスを引き起こさないライフスタイルを実践できるスキルで、自律心を育むうえで欠かせません。



ライフスキル」とは、ストレスに対して「ストレスちゃんこんにちは。また来たの、久しぶりだね」の感覚で上手につきあうことができる力と考えると判りやすいと思います。
人の暮らしは、「なにを、どうするのか」という選択の連続です。
その都度、自分とまわりの人、社会、環境と調和することが必要になりますが、どうしていいのか分らないとなると、ストレスが生じるものです。

「なにを、どうするのか」について、迅速に、適切な判断ができればストレスも最小限度にすることができますが、神様ではない凡人には現実には不可能です。
そこで、「なにを、どうするのか」を選択する以前に、苛立ちやストレスにつきあえる力があれば、落ち着いてベストは判断も可能になります。

ストレスにつきあう力は、個人本人の身体的健康、精神的健康、社会的健康が重要な役割を果たします。そこでライフスキルが効果的になるのです。

自己実現を達成するためのライフスキルとモチベーションの関係に注目してください。
特に自己肯定スキルが根幹をなしていることに関心をもってください。
ネガティブな想像と無意味な自意識は、5つのライフスキルによってもたらされていますが、なかでも自己肯定スキルの影響は甚大です。


自分のことが好きになる、自分を認めてあげる気持ちが自己肯定スキルです。
自分への信頼感となる自己肯定スキルを育んでいくと、次のようなことが必要になったり、できるようになります。

1. 私は私のままでいい……


相手に合わせて、決してよくないのに、いいふりをしたりしない。
相手のために無理をせず、そのままの自分でつきあう。
そうすることで、まわりの人のことももっと分ってくるようになります。

相手に合わせて無理している間は、実は相手のことを考えているというより自分が相手に嫌われないかと自分のことばかり見ているからです。

自分を自分のまま表現できるようになると、お互いの弱さを受け入れることができ、より親密な関係が築けます。

また自分の長所を認識することができ、自信が持てるようになります。
自他ともに尊重することが基本です。


2. 自立心ができる……


相手に引きずられて決めるのではなく、自分がどうしたいのかを自分で決めるようになる。選択は自分でしている。
自分で選択できる実感が責任感を強めます。そして責任をとれるようになりたいと思います。自分のことは自分でできるようになれば、自分のことは自分でしたいと思うようになります。
決めたことがうまくいかなくても人のせいにしなくなります。


3. 共感できる……


一緒にいても、相手に合わせているようでは、自分はいないのと同じです。それではただ一緒にいるだけのことで、コミュニケーションはできていない状態です。相手に合わさずに自己表現すると私は私のままだから、共感することが可能になります。

一緒に過ごす機会を通してお互いに大切にすることができるようになります。


4. 価値観を明確にして、別々でも楽しめる……

寂しさに飲み込まれずに、自分と相手は別なのだと意識できるようになると、相手の時間や考え方など、相手の自由を束縛しなくなります。

お互いの価値観を率直に認めることができて、別の友人と過ごしたり、一人で楽しむこともできるようになります。


5. お互いの権利や責任を意識して話し合う……

なにごとか問題が発生したり、誤解が生じたとき、感情的にならずに、客観的に率直に話し合える。互いの権利や責任を認識した上で話し合うこともできます。


6. 成長を認め合う……

自分の短所を認識して、否定して終わりではなく、自分の能力に対して現実的な期待することができるようになります。
同じくまわりの人の成長を心から応援し、喜ぶことができるようになります。お互いに新しいことに興味をもったり、考え方が変化していくことを認めることができるようになります。


7. 応援する……


相手がつらいときは、そばにいてあげたり、自分のことのように真摯に話を聴いてあげる。
自分の価値観を押しつけずに、いま相手がどうしたいのかを聞いてあげて、実行を応援する。


以上、コミュニケーション能力に変化が起こることが判ると思いますが、その大きな柱になっているのが、積極的自己表現といわれるアサーティブです。